「伊吹嶺」11月号
遠峰集より
曝しけり母の名のある句会報
夕端居子と折紙のだまし舟
西口を抜けて秋暑の都庁前
新涼や展望室にピアノ聴き
水細く使ふ朝や震災忌
伊吹嶺賞応募作
子規庵春秋
足早に鶯谷を春ショール
目の大き自画像の子規冴返る
あたたかや子規の食事の模型膳
若葉光磨き抜かれし板硝子
拓本の軸に影置き百合香る
子規のこと語るビデオの声涼し
青梅雨や芳名帳の墨匂ふ
十歩行くたび庭石に蚊遣香
絶命の部屋へ明るし花糸瓜
秋風や文机のみの子規の部屋
刳り抜きし机に庭の千草活く
小窓めく棚に糸瓜のたわわなる
糸瓜垂る裾に絶筆三句の碑
しづくして秋海棠のさくら色
水引草そよぐ鼠骨の句碑の辺に
八重と律行き来の井戸や小鳥来る
朝顔や草花帖のその紫紺
くれなゐの秀の伸びらかに鶏頭花
子規の庭歩けば小さき花野かな
縁小春鶉ゐし日の遠くなり
選を入れてくださった選者の先生に感謝しています。
昼
夜