2025年8月27日水曜日

俳句甲子園 その3 決勝

横浜翠嵐vs京都洛南  題「百」  選者13人

漫画読む腕のしびれて百日紅  洛南
水打つて昭和百年目を生きる  翠嵐  〇勝ち

満点10を翠嵐につけた高野先生:漫画の句は実感とアングルが良い。
題は昭和百年から取ったと思うが、水打つの句は、人間の営み、庭木は甦る、埃が鎮まる、と場面が見えてくる。現在を生きている人へもしかしたら亡くなった人が帰ってきてくれる、など若者でも老人でも今生きているその場だという実感で満点をつけた。

ゆるやかに登る百段雲の峰      翠嵐
二百十日猫の毛の付くシャツを振る  洛南  〇勝ち

小澤先生:両方とも取り合わせ。雲の峰の句、大きく気持ちの良い句。
二百十日、9点入れた。句材に距離があり、二百十日への恐れと、猫への愛情を感じて評価した。「ゆるやかに」への疑問への評もよかった。師匠の藤田湘子は、題を季語に入れるのはダサいと言った。

夏の雨百万遍のバスを待つ     洛南
百日紅母がふたりのおままごと   翠嵐  〇勝ち

高田先生:作品「夏の雨」夏を大きくとらえたいのかと思ったのだが百万遍「の」でいいかなど。「母がふたり」はお母さん役の主張ととった。百日紅が降ってくる形が金平糖のようでよかった。

百年の居留守を覆ふ葎かな     翠嵐  〇勝ち  優勝確定
長押這ふ百足の跡は泣くやうに   洛南 

西村麒麟先生:居留守はいるようないないような不思議な感じ、葎がよかった。閉じこめられているような夏の怖さを感じた。「長押這ふ」は無駄ではなかったか。人から嫌われる百足に「泣くやうな」が良かった。

覚え無き栞の落ちて百合香る   洛南
家系図に知らぬ百人秋簾     翠嵐  〇勝ち ディベートなし選者の直感で旗

星野高士先生:百人知らないとは古い家系。秋簾が影をさしているようだ。秋簾でなくても良いかと思ったが、部屋に集まったのだろう。いい試合を見せてもらった。



俳句甲子園 その2

 高碕vs名古屋B

新涼や役所に植うる記念の木   高崎
新涼や抜かれたる歯を渡されて  名古屋B 〇勝ち

小澤先生 名古屋Bとしたが新涼や抜かれたる歯を渡さるるとしたい。 「て」は弱くなる

新涼や木琴に桴しまふ音    名古屋B  〇勝ち
新涼や痣のうつすら広がつて  高崎   

中原先生  「て」どめより「うっすら」が気になる。木琴とバチの出会いがよい。

中原先生はよどみなく流暢にお話しされ聞きやすい

口笛の今新涼に混じりけり  高崎    〇勝ち
折鶴の終はり息入れ涼新た  名古屋B

神野先生 「新涼」を一句一章の中に用いているところが良かった。
「折鶴」という素材がよく詠まれ、既視感をぬぐい切れない。
言葉をさらに尽くして相手に伝えて。

秋涼の魚拓に眼なかりけり    名古屋B  〇勝ち
新涼や小さく足を組み替へて   高崎   

岸本先生 秋涼、眼、どれも効いている。

新涼や苔を伝ひし水の音     高崎
風呂椅子の真中に穴や涼新た   名古屋B  〇勝ち

堀田 苔の視覚と音の聴覚 即物的 風呂の穴で勝負で 苔の句は類想があるかな。

横濱翠嵐vs高崎

鶺鴒のととと飛び立つつもりらし  横浜翠嵐  〇勝ち
鶺鴒の降りし石より水蒸気     高崎

鶺鴒のかわいらしさが横浜翠嵐だなあ(私)

鶺鴒や鋤を地面に刺してゐて    高崎
鶺鴒の堂々歩くアーケード     横浜翠嵐  〇勝ち

村上先生 人に親しい鳥。アーケードにいそう。「刺して」に動の場面か静の場面か

鶺鴒の十歩のあとを我が一歩   横浜翠嵐   〇勝ち
手水舎の竹の湿りて鶺鴒来    高崎

堀田先生 横浜:鶺鴒は歩く句が多い。ただ映像的に確定しないのではないか。

高崎の、湿りの体感。

鶺鴒やキャップを分くる用務員  高崎   〇勝ち
鶺鴒やところどころにトタン屋根 横浜翠嵐

五局目略

岐阜の会社「句具」の協力がありまして看板が立っていました。

星野Avs洛南

屋根に立つ十字架細し蔦紅葉  星野A
交はれる蔦の隙間の燦燦と   洛南   〇勝ち

評 十字架細し の 細し は他の言い換えがないか

蔦かづら父の口笛置いてゆく     洛南  
ブロック塀より蔦かづら攻めてくる  星野A 〇勝ち 

評 蔦の生命力、ちょっと迷惑な感じが良いと思った

土佐犬のいびきの匂ふ蔦かづら    星野A
蔦這ふや連弾の手のやはらかく    洛南  〇勝ち

風走る浜辺に蔦のまばらなり     洛南  〇勝ち
回旋塔回る境内蔦かづら       星野A

星野先生 景色がぱっと入ってくる。私には初見で飛び込んできた。
困った時の「風」と「影」はダメだと教えているが、「走る」がよかった。
境内の句はもう少し絞って詠みこんでもよかった。

蔦紅葉ベンチにひらくことりっぷ  星野A  〇勝ち
蔦這へる柱に夢のくらさあり    洛南   

高野先生 旅に行けない人が本を開いているイメージがあり9点をつけた。
夢の句は難しい。色々な解釈ができる、かつて生きていた木への思いがよい。

どの高校生の句も私より上手だなー

俳句甲子園2025

俳句甲子園に出場する子たちは良い子ばかりだなーと感心してYouTubeを見ています。

総合司会の家藤さんは良い声です。

決勝リーグから

洛南vs山形東    題 鶺鴒

鶺鴒や湖岸の砂をさくさくと   京都洛南 〇勝ち
水筒の紐ねぢれをり石叩     山形東

妹背鳥鏡の縁を拭ひけり     山形東
近づきし二歩に鶺鴒三歩逃げ   京都洛南 〇勝ち

鶺鴒は幾度も沖を描き直す    京都洛南 
鶺鴒は薄き未来を走りをり    山形東  〇勝ち

一番になれず鶺鴒のやうな人   山形東
握りやすさうなる腹の黄鶺鴒   京都洛南 〇勝ち

鶺鴒の嘴のしづくに月光る    京都洛南  
鶺鴒の世界を真二つに飛ぶ    山形東  〇勝ち

名古屋Bvs横浜翠嵐  翠嵐は県立

蔦かづら頬を触れば歯のかたさ  名古屋B
蔦かづら辞書編むといふ生業も  横浜翠嵐 〇勝ち

いちめんに蔦ぐつたりと疲れたる  横浜翠嵐
洗脳のごとくに蔦が樹を広がる   名古屋B 〇勝ち

難しき方の齋藤に似て蔦      名古屋B
蔦葛空の四角の街にゐる      横浜翠嵐   〇勝ち

蔦蔓このガマで何人死んだ     横浜翠嵐  〇勝ち
蔦の葉から蔦の葉へ雨ゆくところ  名古屋B