2018年11月10日土曜日

レモンチェロ

本誌掲載分だけと思ったのですが
今まで全部載せていたので20句。

ポンペイのからりと晴れて春兆す
ベスビオの頂ふたつ木の芽風
かげろへり轍残れる石畳
小窓より春日差し込む大浴場
娼館の壁画にうすき春埃
身悶へし犬の石膏余寒なほ
児を庇ふ石膏像や冴返る
鷹鳩と化して遺跡の列柱に
アーモンドの花のももいろ春蘭くる
青き踏む紺碧の海見ゆるまで
波の秀の生れては崩れ風光る
春潮へ半島ぐいと迫り出せり
山肌にはりつく家並鳥曇
断崖の風に吹かるる春ショール
蘇芳咲くとんがり屋根の小さき家
夕永し路地までピザを焼く匂ひ
春夕焼トレビへコイン握りしめ
月おぼろ大きく欠けしコロッセオ
春惜しむ夫と酌み合ふレモンチェロ